冷却服(空調服・水冷服)着用時におけるWBGT値の取扱マニュアル

【対象者】 安全衛生管理者、現場責任者、および現場作業員
【目的】 誤った熱中症指標(WBGT値)の計算を防ぎ、正しい冷却服の効果評価と安全管理を行う。
1. 本マニュアルの要点(結論)
- 【厳禁】環境のWBGT測定値を直接引き算(マイナス補正)してはいけません。
- 【正しい対応】 冷却服の効果は、環境数値を下げるのではなく、「許容される基準値を引き上げる(身体の負担を1ステップ下げる)」という形で安全管理に反映します。
2. なぜ「WBGT値のマイナス補正」はできないのか?
① WBGT値は「環境」の数値であるため
WBGT(暑さ指数)は、その場所の「気温・湿度・日射(輻射熱)・気流」の4つから計算される「環境そのものの暑さ」を示す指標です。作業者が衣服の中でどのような対策をとっていても、その場所の空気の危険度(環境WBGT)自体が下がるわけではありません。
② 衣服の補正は「プラス(加算)側」しか定義されていないため
厚生労働省のガイドライン(JIS B 8504)では、衣服による補正(着衣補正値)は以下のように「体に熱がこもるリスク(加算)」しか認められていません。標準的な長袖作業服を基準(±0℃)とし、防護服などを着る場合は数値を追加してより厳しく管理します。
- ※空調服や水冷服による「マイナス補正(減算)」の公式ルールはありません。
3. 現場で冷却服の効果を「数値化」して運用する方法
環境のWBGT値はそのまま記録しますが、実質的な冷却効果を現場の運用ルール(休憩時間や作業時間の判断)に組み込む際は、以下の「基準値(管理目標値)の引き上げ」を採用します。
運用ルール:作業強度の段階を「1ステップ下げる」
空調服や水冷服を着用することで、心拍数の上昇や体温上昇が抑えられ、身体への熱ストレスは「ワンランク軽い作業」と同等まで軽減されることが実験で証明されています。
【運用例】気温33℃・湿度60%(環境WBGT:30℃)の屋外建設現場の場合
- 通常の服装で重労働(シャベルでの穴掘り等)をする場合
- 身体の負担:【レベル4:重労働】 ➡ 基準値は 25℃
- 安全評価:環境WBGT(30℃)> 基準値(25℃) ➡ 【大幅な基準値オーバー・原則作業中止または頻繁な休憩が必要】
- 空調服または水冷服を着用して同じ重労働をする場合
- 身体の負担:【レベル3:中等度の労働】へ1ステップ引き下げ ➡ 基準値が 28℃ に上昇
- 安全評価:環境WBGT(30℃)> 基準値(28℃) ➡ 【基準値オーバーだが、適切な休憩と水分補給を挟めば作業継続可能と判断】
注意: 空調服を着ていても、環境WBGTが31℃を超える「危険」レベルの時間は、基準値に関わらず一律で厳重警戒(無理な連続作業の禁止)としてください。






















